普段の物静かな陸からは想像のつかない姿に、晴海は動揺して息を飲んだ。

陸はかぶりを振りながら、自身の両肩を掻き抱いた。

「駄目だ…俺が一緒にいたら、晴にまたあんな悲しそうな顔をさせてしまう…危険な目に遭わせてしまうっ…!そんなの嫌だ…嫌だっ!…俺はっ、晴の傍にいないほうが良いんだ!!俺のっ…俺のせいで、俺がいるせいで、俺が此処に来たせいでっ…!!」

「やめて陸っ!!」

両腕を握り締めて激しく言葉を捲くし立てる陸を、晴海は咄嗟に抱き締めた。

「……っ」

「陸は何も悪くない、陸のせいじゃない…!私も陸を守りたかった、陸が傷付けられるのが嫌だったの…!そしたらあのときいつの間にか飛び出してた」

あの場に出て行ったところで、自分が何も出来ないことくらい最初から解っていた。

寧ろ、陸の足手纏いになるであろうことも。

だから陸は慶夜に見付からないようにと、気を配ってくれたのだろう。

それでも陸に危険が迫っているのを目の当たりにしたら、出て行かずにはいられなかった。

「私が勝手に動いただけ……だからそんなこと言わないで」

幼い子供をあやすように、少し癖のある銀髪を優しく撫で続けていると、陸は徐々に落ち着きを取り戻し始めた。

「晴、俺は…」

「…私、陸の傍にいたい。陸に、傍にいて欲しい。だから陸が私を守るって言ってくれて、とっても嬉しい」

「……はる…」

泣きそうな声に、小さく名を呼ばれた。

陸は今、どんな顔をしているのだろう。