すると陸の瞼がゆっくりと開かれ、次いで現れた真紅の両眼にこちらをじっと見つめ返された。

「………はる」

掠れた声で名を呼ばれた瞬間、胸が締め付けられるようだった。

「陸…!良かった、気が付いてっ」

「…晴、俺のこと…呼んだ……?」

不思議そうに陸から訊ねられ、大きく頷いて見せる。

「呼んだよ…っ聞こえた…?」

「…聞こえた……晴が呼んでる声…」

陸の掌に重ねていた手が、弱々しく握り返される。

「良かったっ……あのね、此処、前にも陸の怪我を診てくれた天地先生の診療所だよ。陸のこと、また助けて貰ったのっ」

「…そうか」

緩慢な動きで身を起こし、陸は突然くすりと皮肉げに笑った。

「俺は……晴に情けないところばかり見せてるな」

「…!そんな、だって陸は」

「決めたんだ…絶対に晴を守るって。なのに、俺は…っ」

晴海の言葉を遮って、陸は酷く取り乱した様子で首を振った。

「いつかこうなるって、解ってたのに…俺は晴を巻き込んで危険な目に遭わせた…全然、晴を守れなかったっ…!!」

「陸…!」