顔立ちだけではない。

声質や背格好は似ているというよりほぼ瓜二つで、まるで慶夜を目の前にしたのかと錯覚してしまう程だ。

大きな差違は、賢夜のほうが短髪だというくらいか。

「っ…ごめんなさい」

だが見上げてかち合った賢夜の双眸は、色彩こそ慶夜のそれと同じであったが、夕夏と同じ穏やかな眼をしている。

「謝らなくていいよ。俺と弟は小さい頃から、双子だと勘違いされるくらい似てるって言われてたんだ」

「…でも……」

「それにあいつは君たちに、本当に酷いことをしたから。君が俺を見て怯えるのも無理はない」

すまない、と逆に賢夜から謝られてしまい狼狽する。

そういえば彼らと慶夜との関係に気を取られて、夕夏にもまだ助けて貰った礼を言っていない。

「さっき譫言(うわごと)で君のことを呼んでた。傍にいてやって」

俺は向こうの部屋にいるから、と言って賢夜は早々と部屋から出て行ってしまった。

結局、まともに言葉を返すことが出来なかった。

助けて貰ったのに、あまりにも失礼な態度を取ってしまったことに、自己嫌悪する。

晴海は小さく溜め息をついて、縋るように陸の傍へ歩み寄った。

――室内には、消毒液の匂いに混じって、微かに血の残り香がした。

それでも、眠り続ける陸の寝顔が穏やかで少し安心する。

だが着衣の袖口から覗く、素肌が隠れる程に包帯を巻かれた両腕が痛々しい。