廊下に出て、真っ直ぐ進んだ先の突き当たり――其処で陸は眠っている。

そう教わって、晴海はその部屋の扉を叩いた。

夕夏の弟、つまり慶夜の兄である賢夜が、自分たちをこの診療所まで運んでくれたらしい。

やはり兄弟だから、夕夏と同様に何処となく慶夜と似ているのだろうか。

そう思っていた矢先に、扉の向こうから上背の青年が現れた。

「ぁっ…あの、えっと……」

その姿を見た瞬間、思わず息を飲む。

青年――賢夜は無表情のまま、視線だけをこちらに寄越した。

「…もう起きて大丈夫なのか?」

少し心配そうな声色で、そう訊ねられる。

その問いに上手く返事が出来ず、晴海はただ首を縦に振ってだけ見せた。

「だったら彼も、野郎の俺より君が付き添ってるほうがいいだろうな」

そんな晴海の様子を見て苦笑しながら、賢夜は室内へと招き入れてくれた。

その間も晴海は、賢夜の顔をどうしてもまともに見つめ返すことが出来なくて俯いたまま黙っていた。

「…四年経っても、あいつは俺と似てるんだな」

独り言のように発せられた賢夜の言葉に、どきりと心臓が跳ねる。

「…っあの、私…」

賢夜の顔を見た、瞬間――彼は慶夜ではないと頭では解っているのに――恐怖で身が竦んだ。