慶夜は能力を自在に操り、無抵抗の陸を圧倒していた。

力を制御出来ないような素振りなど、微塵も感じられなかった。

「…この四年の間に、弟に何があった？炎夏に現れたなら何故此処に帰って来ない？ 解らないことだらけだ…だからあの陸って子は、何か知ってるんじゃないかって」

「……陸は」

訊ねても、話してくれるだろうか。

「答えてくれないかも知れない……私も陸のことは何も…知らないから…」

本当は、知りたい。

力になって、あげたい。

もっと陸に心を開いて欲しい。

でもどうすれば良いのか、解らないままずっと過ごしてきた。

「…彼は、どうして君と一緒にいるの？暁からは、あの子が怪我をしてるところを君が見付けたって聞いたけど」

「困ってる私のことを、助けてくれたの。だから、怪我が良くなるまでうちにいて貰うことになって…でも詳しい話は、何も訊けなくて」

「…君にはきちんと彼から事情を訊ける権利があると思うよ？君は彼を助けてあげてたじゃないか」

「…私、が？」

心当たりがなくきょとんとしていると、夕夏は呆れたように苦笑した。

「慶夜から彼を守ったのは君でしょ？あのままじゃ彼は、慶夜に負けてた筈だ…君が出て行ったから状況が変化して、二人共助かって、此処にいる。違う？」

そう、だろうか――良く解らない。

自分が助かったのは、結局陸のお陰ではないだろうか。