ならば陸が慶夜と知り合ったのは、慶夜が炎夏から姿を消した後だというのか。

そういえば慶夜は、陸を何処かへ連れ戻そうとしていたようだった。

陸は頑なにその“何処か”へは戻らないと慶夜に告げている。

一体、今まで二人は何処に――そして慶夜は何処へ去ったのか。

「…信じて貰えないかも知れないけど」

夕夏がぽつりと言葉を発した。

「弟は気の弱い子で、近所の子に苛められていつも泣いてばっかりだったんだよ。でも私が仕返しに行こうとするとやめてって、言うんだ。ま…私が行くと倍返しじゃ済まなくなるってのもあるけど」

「え…」

「慶夜は、それが自分を傷付けた相手でも、他人が傷付くのを嫌う優しい子なんだ…!あんな残酷なことを笑いながら出来るような子じゃない…!!」

――まるで同じ名前の、別人の話を聞いているようだと思ってしまった。

だが陸との遣り取りを見ていたらしい夕夏も、恐らく同じような想いでいるのだろう。

その表情は、泣き出してしまいそうなくらい苦しげだった。

「…久々に炎夏に帰ってきたら、大きな爆音が聞こえてきた。爆発が起きたらしい場所に駆け付けたら、其処に君たちがいた。それに――あれは弟だって、すぐ判ったよ」

夕夏は、淡々と言葉を続ける。

「記憶の中の弟より随分でかいし、遠目だったのに案外判るものだね。でも…あんなに巧く能力を使いこなしてるのは妙だと思ったんだ」

「どういう、こと?」

「確かに昔から、穏やかな性格に不釣り合いなくらい弟の能力は強かった。でも、力が強過ぎて自分じゃ上手く制御出来なかった筈なんだ」

「!それって…」