慶夜が目の前に構えた両手から、真っ赤な光と共に巨大な――まるで溶岩の塊のような――焔の球(たま)が生まれた。

焔は慶夜の掌から放出される赤い光が強まると、煌々と燃え盛り、大きさを増してゆく。

だがその一方で、雨の雫が当たる度にその外郭は少し小さくなった。

「く…っそ、が!!」

慶夜は苛立ったように怒声を上げると、更に両手に力を込めた。

渾身の力を注がれた焔の球が、縮んでゆく速さを上回って一気に膨れ上がる。

「喰らえっ!!」

真っ赤な焔の塊が、轟音と熱風を纏いながら陸目掛けて放たれた。

「無駄だっ…!」

しかし陸が青い光を纏った右手を伸ばすと、焔はその掌の目前でぴたりと動きを止めた。

陸は、ゆっくりと空を握り締めるように、右手に力を込める。

するとその動きに合わせて、焔の塊は湯気と蒸発音を上げながら急速に小さく萎み始めた。

「まだだ…吹き飛べ!!」

「!」

慶夜が目の前に拳を突き出したのを合図に、焔から一気に光が膨れ上がって大爆発が起こった。

「陸っ!!」

思わず悲鳴のような叫び声で陸の名を呼んだ。

陸の立っていた場所には大量の砂埃が巻き上がり、その姿を確認することが全く出来ない。