「っ…!」

雨の匂いに混じって、血の匂いがする。

青年は、その左腕の肩口から出血しているようだった。

白銀の髪に雪のように白い肌――それに真っ赤な血が妙に映えて、凄惨な光景なのに綺麗だと思った。

そして肩を濡らす血潮よりも鮮やかな紅い眼が、驚いた様子でじっとこちらを眺めている。

その眼に見据えられて、晴海はぎくりとした。

紅柘榴のような眼は、見惚れてしまう程に綺麗で恐ろしかった。

「っ…だ、大丈夫!?」

そうだ、ぼんやりしている場合ではない。

ふと我に返った晴海は、慌てて青年の目の前に膝を折った。

しかしその途端、逃げるように青年が後退りする。

その拍子に、左腕から新しい血がどろりと溢れ出た。

「!大変、まだ血が」

止まっていないんだ、とりあえず止血をしないと。

片手を塞いでいた傘を畳み、咄嗟に青年に向かって手を差し伸べた。

その瞬間――

「っ触るな!!」

「えっ」