だがその疑問は、すぐ目の前の光景に打ち消された。

陸の左腕の傷口から、夥しい量の血が流れ出ているのだ。

まさか、力を行使することが傷の負担になっているのか――

「陸っ!!」

驚愕してその名を叫ぶと、陸はこちらへ向かって微笑んだ。

「っ!しまった…陸、止せ!!」

一時呆然としていた慶夜が、慌てて陸に飛び掛ろうとした瞬間。

青白い光が一層強まり、辺り一面に拡散する。

すると、俄に空から大粒の雨が降り注ぎ始めた。

「く…っ!」

雨を浴びた途端、慶夜はがくりとその場に片膝を着く。

「畜生っ…忌々、しいっ」

慶夜は口惜しげに陸を睨みながら、苦しげに呼吸をし始めた。

それに、広場を取り囲んでいた焔の壁が雨を受けて目に見えて小さくなっていく。

しかし同じ雨に当たっている筈の晴海には、何の影響もない。

寧ろ苦手な筈なのに、この優しく暖かな雨は不思議と心地良いと感じる――一体この雨は何なのだろう。

「…これでお前も焔を使えない」

「黙れ…!この程度で俺を抑えたつもりか!?俺の力が尽きる前に、お前を潰せば済むことだ!!」