「え…?」

「小賢しい真似しやがって…退(ど)けっ!」

「きゃあっ!!」

慶夜が右腕を真横に薙ぎ払った瞬間、身体が熱気を帯びた強い衝撃に弾き飛ばされた。

「晴!!」

「う…っ!」

身体が、瓦礫の山と化した噴水の破片の一つへ強かに打ち付けられる。

ぐらりと霞んだ視界の先には、遠巻きにこちらを睨む慶夜と苦しげな陸の姿が見えた。

「弱いくせに、この俺に楯突くつもりか。なら望み通り遊んでやるよ!」

怒気を含んだ陰湿な笑みを見せる慶夜に、言い知れぬ恐怖を覚える。

「慶夜っ!!やめろ、その子は関係ない…!!」

陸は立ち上がろうとするが痛みで両足に力が入れられず、がくんとその場に崩れた。

「陸、そんなにあの女が心配か?だがお前は其処で見てることしか出来ない…無様だな」

陸を嘲りながら、慶夜はじりじりとこちらとの距離を詰める。

「くっ…晴…!逃げろっ…!!」

「どうした?威勢が良かったのは最初だけか。だったらせめて逃げ回るくらいして見せたらどうだ」

(逃げ、なきゃ)

しかし、焦る心とは裏腹に身が竦んで、走るどころか思うように立ち上がることも儘ならない。