「うああぁぁぁあっ!!」

陸の苦痛に満ちた叫び声が、辺りに響き渡る。

無理矢理抉じ開けられた傷口からは、真紅の鮮血が溢れ出した。

「りく…っ!」

晴海はその光景に戦慄しつつ困惑した。

何故、陸は全く反撃しようとしないのか。

助けてくれたときは、あんなに強かったのに。

陸は慶夜に負けないくらい、強い筈なのに――

「そうだ…それでいい。お前には血の色がよく似合う」

慶夜は満足げに笑いながら、痛みに耐えかねて頽(くずお)れた陸に声を掛ける。

続けて陸に向けて右手を伸ばすと、その掌から白い焔が巻き上がった。

術者自身が焼かれることはない、能力者の焔――

その焔は、秦が扱うそれとは桁違いの威圧感を放っている。

「弱ったお前を相手にしてもつまらないな。遊びはお終いだ…暫く眠ってろ」

陸が、危ない。

慶夜というあの男に、何処か遠くへ連れて行かれてしまう。

きっともう二度と、会えなくなる――

そう考えたら、勝手に身体が動いていた。