だとすれば慶夜も能力者、なのか。

属性は恐らく、焔――それも同じ焔と言っても秦の操るそれとは、比べものにならない程に強力な。

その焔は高温且つ高熱過ぎて、一瞬だけ目に止まる閃光にしか見えないのだ。

「陸、俺にはお前なら防げる攻撃しか出来ないぞ?」

慶夜が再び手を前に翳すと、その掌から真っ赤な光が立ち上(のぼ)った。

すると陸の右腕、左足が次々と閃く焔に包まれてゆく。

「…っ!!」

また悲鳴を上げそうになるのを、必死で堪えた。

(陸……!!)

陸も、声を上げなかった。

両足と片腕を潰され、残るはまだ傷の癒えていない左腕だけ。

陸は痛みに顔を歪めながら、それでもじっと慶夜を見据えていた。

「呻き声一つあげない、か。いたぶり甲斐がなくて面白くないな。…これなら、どうだ」

慶夜は不満そうに溜め息を吐き出すと、ゆっくりと陸に歩み寄った。

陸はびくりと身動ぎしたが、焼け爛れた両足が痛むのかその場から動かなかった。

慶夜は笑いながら、陸の左腕に掴み掛かる。

「っ!やめろっ…」

陸が腕を振り払うより先に、慶夜はその手に力を込めて肩の傷を抉るように引き裂いた。