「素直に戻ると言え、陸。今ならこれ以上、無駄な怪我が増えずに済む」

(戻る――何処、へ?)

すると陸は、今度は小さく首を振って慶夜を真っ直ぐに睨み付けた。

「俺は戻らない。何があっても、絶対に…!」

「そうか。残念だがそれなら仕方ないな」

慶夜がそう告げて片手を目の前に翳すと、陸の足元で眩い閃光が膨れ上がった。

「っ!?」

光は一瞬で消え去ったが、直後に陸ががくんと片膝を着いた。

力が抜けた陸の右足首が、焔に焼かれたように煙を上げている。

「ゃ…っ」

思わず悲鳴を上げかけたが、それよりも早く陸が視線だけをこちらに向けた。

「!」

陸の咎めるような鋭い眼差しに、思わず息を飲む。

声を上げるな、と言いたいのだろうか。

(だけど、陸――)

「陸、どうした?お前なら今程度の動きくらい、予測出来た筈だろ?」

慶夜が心底憐れむような声色で、陸を見下ろす。

先程の閃光は、彼の力によるものなのか。