――この先に誰か、いる?

しかも、こんなに多量の出血をする程の怪我を負った――

怪我人ならばすぐにでも助けたほうが良いのだろうが、一人でそれを確かめるのは些(いささ)か怖い気もする。

何か物騒なことに巻き込まれたら、どうしよう。

一旦、誰かを呼びに引き返そうか?

「………っ…」

そう思ったとき、ほんの微かにだが呻き声が聞こえてきた。

「!」

どきりとして辺りを見回す。

すると視線の先に、道幅が少し広くなっている場所を見付けた。

其処は確か、飲み屋の裏口で屋根が架かっており、空き瓶の詰まった箱や資材が山積みにされている。

声はその物陰から聞こえてきた。

怪我の主は雨を避けるために、其処へ逃げ込んだのだろうか。

「っ…誰か、其処にいるの?」

思い切って呼び掛けてみたが、返答はない。

だが物陰に近付くにつれて、地面に落ちた血の量は多くなっている。

恐る恐るその傍まで歩み寄ると、意を決して物陰を覗き込む。

――其処には、血塗れの左腕を庇うように青年が蹲(うずくま)っていた。