けれど、怪我が良くなったら陸はすぐに此処から出ていってしまうかも知れない。

それはそれで複雑だった。

「…あ。でも陸、もしかして人の多い場所とか苦手?なら私だけで行くけど…」

素性のはっきりしない陸に留守を預けて出掛けるなんて不用心、だとは不思議とあまり思わなかった。

ただ、陸を一人にしたらそのままいなくなっているんじゃないかと不安にはなった。

「…いや。今日は仄さん、遅いんだろ?晴一人じゃ荷物持ちとか大変だろうし、一緒に行くよ」

「えっ…いいの?」

軽い気持ちで誘ったはいいが、もしやあまり人目につきたくないのかと推測しただけに、その返答は意外だった。

「俺もたまには外に出なきゃ」

閉じ籠りがちなことは気にしていたのか、そう言って陸は苦笑した。

流石に“何かに追われているのだろうか”とか“その何かから逃げるときに負傷したのか”とか、考え過ぎだったか。

きっと今までは、単にまだ体力が回復していなかっただけだったのだろう。

何となくそう納得して、晴海は胸を撫で下ろした。

「じゃ、ごはん食べよう?おなかすいたでしょ」

そういえば陸と出掛けるのは初めてだな、と思ったらちょっと楽しみになってきた。


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