すると陸はしまった、と小さく呟いた。

「ごめん…俺、全然手伝わないで。作る前に呼んでくれれば良かったのに」

「いいよいいよ、陸は怪我してるんだから。なのに容赦なく働かせる母さんがおかしいんだよ」

聞けば、陸の利き腕は左らしい。

ただでさえ片腕の自由が利かないのに、それが利き腕となれば更に難儀だろう。

「居候させて貰ってるんだ、そのくらい当然だよ。晴も、俺にそんな気を遣わなくていいから」

俺、そんなにやわじゃないからな、と細身の体で言われてもちょっと説得力に欠ける。

「?晴、どうかした?」

なんて考えていたら、陸が不思議そうに首を傾けてこちらを見つめていた。

「あっ、ううん何でもない。そうだ、お昼食べたら買い物に行くんだけど、陸も行かない?」

「買い物?」

普段は仄が休みか早上がりの日に一緒に買い物へ出掛けるのだが、今日は出掛けに帰りが遅くなると言っていた。

「明日に、したら?仄さん、明日休みだし」

「うん…でも、このままじゃ今日の夕ごはんの材料、殆どなくって」

実際食が細いとはいえ、陸の食べる分が増えた影響で食材が減るのが普段より早かったのだ。

実を言えば、今日の昼食を二人分作るのも結構ぎりぎりだった。

「…それについては俺もだいぶ、責任を感じる」

「陸が沢山食べてくれるのは、嬉しいよ。ちゃんとごはん食べなきゃ、怪我も良くならないもの」