「だから、京さんが陸を取り戻すために奔走する姿を、ただ見てる訳には行かないんです」

「晴海ちゃん」

「…私に京さんのお手伝いさせてください。陸を取り戻すために私が出来ることがあれば、何だって協力します!」

京は少し戸惑いがちに首を傾げると、こちらをじっと見つめて眼を細めた。

「…有難う。君は優しい子だね」

「っ…!」

そんなことない――

懸命に首を振ってそう言い掛けると、京は人指し指を晴海の口元に当ててふわりと微笑んだ。

「…実は今からある人たちに逢うところなんだ。彼らは陸のことを良く知ってる筈だから、晴海ちゃんも一緒に来るかい?」

陸を良く知る人たち――誰のことだろう、全く見当が付かない。

だが、これから逢いに行くのなら答えを急ぐ必要はないことに気が付き取り敢えず慌てて京に頷いて見せた。

「じゃあ、ついておいで」

京の後ろに着いて廊下を歩き出すと、ふと「ああ、それから」と再び声が上がった。

「炎夏の国のことなんだけど」

「あっ…はい」

不意に全く別の――元いた国の話題を振られ、思わずどきりとする。

それは果たして、良い知らせか否か、京の声色からは読み取れなかった。

「ちょっと大変みたいなんだよ。住民たちが領主に対して、一斉に暴動を起こしたらしい」