「それで京様は、ご自身も旦那様の補佐でご多忙なのにその合間を縫って陸様の捜索に尽力されてきたの。晴海ちゃんが陸様を連れて来てくれて、京様もこれで人心地付けるかと思ったのに…」

なのに、今回の襲撃で陸は再び連れ去られてしまった。

京が周の前であんなに激昂したのも、そんな想いがあったからか。

「京さん…」

「お二人の血縁を理由に、不仲を疑う者もいない訳ではないわ。でも京様にとって愛梨様と陸様は、血の繋がりなんて関係ないくらい大切なご家族なのよ」

咲良は美月が京を疑っているのを知っていたのだろうか――けれど彼女は京のことを信じている。

「何だか長話になっちゃったわね。夜遅いのに、ごめんなさい」

話しながら家具や装飾の配置を調整しているうちに、すっかりやることのなくなった咲良は、はたと我に返って苦笑した。

「いえ、色々とお話を聞かせてくださって有難うございます。でも私が聞いてしまっても良かったんですか?」

「貴女になら話しても大丈夫って思えたのよ。このお邸に、変化を齎(もたら)してくれた貴方には…知っていて欲しかったの」

ふと両手を握られ、戸惑いがちに相手を見上げると、咲良は優しく微笑んだ。

「…?」

「うふふ。若い頃の愛梨様を思い出すわ…やっぱり男の子は母親に似た女の子を好きになるのねぇ」

「えっ…私が、ですか?!」

色々な意味で思わず顔が真っ赤になった。

夕夏や街の住民たちの話に拠ると愛梨は、誰もが羨む程の美貌と誰もが敬う程の慈愛に満ちた心の持ち主、と聞く。

そんな愛梨と似ているだなんて、嬉しいけれど、凄く勿体ない気がする。

「ええ。晴海ちゃんは愛梨様に…愛ちゃんに良く似ているわ」