「私っ…陸に……」

『本当は、あの人も助けたかった…っだからせめて、その子供だけでも助けたい』

陸はあのとき此処で、そう言っていたではないか。

『…元気に、なった?今の、さ。月虹にいた頃、前に話した俺の担当の人が同じようにしてくれてたんだ』

いつだって父の話をしてくれていた――陸はあのとき、どんな気持ちでいたのだろう。

『…晴には、逢いたい人とか…いる?』

父や風弓のことを話してくれなかったのも、きっと何か理由があったに違いないのに。

どうして陸のことを信じる、だから行かないで、と言えなかったんだろう――

『もしも月虹から出られたら、一目でいいから、彼女と逢ってみたかった。最初の願いはただ、それだけだったんだ』

陸はずっとずっと、想ってくれていたのに。

「周さん、私っ……陸に逢いたい…」

周の目の前だというのに、涙が止め処なく溢れてきてぽろぽろと零れ落ちた。

「晴海ちゃん…」

そんな晴海を見兼ねてか、周の掌が優しく頭を撫でてくれた。

今は両親や弟や誰よりも、陸に逢いたい――


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