「美月、お前も下がれ。京の血筋のことは、あいつ自身が一番理解してるよ。二度とそのことを口にするな」

「…はい」

動揺しているのか、美月の声は微かに震えている気がした。

「――ぁ…あの……」

美月が出ていってから、残された晴海は恐る恐る周に声を掛けた。

「…すまないな、見苦しいところを見せてしまって」

明るく笑う周に、何も返す言葉が見付からなくて、ただ首を振って見せる。

「…美月は、俺の妹みたいなものなんだ。子供の頃から一緒でな、だからあいつが俺を欺くような真似はしないと…信じたい」

信じたい――ということは、何か周も思う所があるのか。

「京が言いたいことも解ってる、だが…まだ何も確証がないんだ。感情論だけじゃ問い詰められない……出来れば誰も疑わずに済めば良いなんて、甘いこと考えてる」

「……周さん」

「でもまた、あの子を独りで行かせてしまった」

再び陸が連れ去られる結果となったことに、周は悔しげに拳を自身の膝へ打ち付けた。

「わ…わたし……」

陸を信じられなかった。

一瞬でも、陸が月虹に戻ることで風弓が助かるかも知れないと聞いたとき、心が揺らいだ。

約束を先に破ろうとしてたのは、自分のほうだ。

陸ではなく、突然目の前に現れた香也の言葉を信じて――