「え…っあの、何か…?」

何か変なことを言ってしまったのかと不安になる。

「月虹には魔道士までいるのか…しかも邸の警備網や俺が張ってる結界を、掻い潜れる程の使い手が」

「私、香也に最初は能力者なのか訊ねたんです。でも相手は否定も肯定もしなくて。だから、もしかしたら…」

「…魔道士であり能力者でもある人間、か?それは有り得ない、と普通なら言いたいところだが……しかし、そう都合良く特殊な能力者を相手は集められるのか…」

周は難しい顔付きをして、暫く黙り込んでしまった。

「周さん、あの…?」

続く沈黙に耐え切れなくなり声を掛けると、周はすぐに顔を上げた。

「ああ、すまない…実は俺が君を呼んだのは、君のお父上のことで話があったからなんだ」

「私の、父ですかっ?!」

まさか周の口から父の話題が出るとは全く思いも拠らず、自分でも妙だと思うような声を上げてしまった。

「何と言えばいいだろうな。俺は君のお父上――才臥さんと、一度だけお逢いしたことがあるんだ」

「父が、周さんと?どうして…」

一国の領主と単なる町医者だった父とに、何故接点があるのか全く想像がつかない。

その父が月虹の研究員であったという香也の話も、晴海には突飛な話過ぎて俄には信じ難いのだが。

「才臥さんは能力者の研究をしている学者の中では、名の知れた人なんだ。それを知って、俺は陸の体質について彼に相談したことがあるんだよ」

成程、それで父と面識があるということか。

もし周が言うように父が能力者の研究に携わっていたなら、月虹のような能力者を集めた施設に必要とされても疑問はない。