ふと落ち着き払った声が広間に響き渡ると、皆が一斉に静まり返った。
広間から上階へと続く階段上に、周が姿を見せたためだ。
「…父さん」
周はゆっくりと階段から降りてきて、皆と同じ高さまで目線を合わせた。
「…陸は昨日、この春雷に戻ったばかりだった。今朝の時点で京は陸が戻ったことを公表すべきだと言ったのに、俺はそれをさせなかった。みんな、すまない」
「領主様、それは一体何故…」
「陸は行方不明になる前の記憶を失っていた。だから陸が春雷での暮らしに慣れるまで、時間が必要だと考えたんだ」
「…そういうことなら、領主様のお考えも解ります。ですが、その陸様のお姿が見えないのは何故ですか?」
最初に京と話をしていた初老の男性がそう口にすると、再び一同はどよめき出した。
「私はこちらに避難する途中で、街を破壊していた者たちの一人と陸様らしき方が、会話をしている場面を見ました。もしや陸様は、春雷を守るために彼らと何か交渉されていたのですか…?」
また別の女性がそう進言すると、周は眉を顰めて首を降った。
「…俺が望まないにせよ、結果的にはそうなった。だから陸は今、春雷にいない」
「では陸様は今何処に?」
「詳しい居場所はまだ判ってないが、陸は絶対に連れ戻す。みんな言いたいことや気掛かりなことは他にも色々とあるだろうが…もう今日は遅い、今はせめて不安を忘れてゆっくり休んでくれ」
懇願するように静かに周が告げると、民衆はまだ少しざわついてはいるものの大人しくなった。
すると周は、こちらに視線を寄越して京と何か目配せした。
「…晴海ちゃん。こっちだ」
「あ…は、はいっ」
広間から上階へと続く階段上に、周が姿を見せたためだ。
「…父さん」
周はゆっくりと階段から降りてきて、皆と同じ高さまで目線を合わせた。
「…陸は昨日、この春雷に戻ったばかりだった。今朝の時点で京は陸が戻ったことを公表すべきだと言ったのに、俺はそれをさせなかった。みんな、すまない」
「領主様、それは一体何故…」
「陸は行方不明になる前の記憶を失っていた。だから陸が春雷での暮らしに慣れるまで、時間が必要だと考えたんだ」
「…そういうことなら、領主様のお考えも解ります。ですが、その陸様のお姿が見えないのは何故ですか?」
最初に京と話をしていた初老の男性がそう口にすると、再び一同はどよめき出した。
「私はこちらに避難する途中で、街を破壊していた者たちの一人と陸様らしき方が、会話をしている場面を見ました。もしや陸様は、春雷を守るために彼らと何か交渉されていたのですか…?」
また別の女性がそう進言すると、周は眉を顰めて首を降った。
「…俺が望まないにせよ、結果的にはそうなった。だから陸は今、春雷にいない」
「では陸様は今何処に?」
「詳しい居場所はまだ判ってないが、陸は絶対に連れ戻す。みんな言いたいことや気掛かりなことは他にも色々とあるだろうが…もう今日は遅い、今はせめて不安を忘れてゆっくり休んでくれ」
懇願するように静かに周が告げると、民衆はまだ少しざわついてはいるものの大人しくなった。
すると周は、こちらに視線を寄越して京と何か目配せした。
「…晴海ちゃん。こっちだ」
「あ…は、はいっ」