「夕夏ちゃん、晴海ちゃん」

病院の待合室で待たされていた晴海と夕夏の元に、京が沈痛な面持ちで歩み寄る。

賢夜が他の負傷者と共に病院へ担ぎ込まれてから凡(およ)そ数時間、時刻は深夜に差し掛かっていた。

「賢夜くんの処置が終わったよ…一命は、取り留めたそうだ。ただ…」

「…ただ?」

口籠る京に、夕夏が震える声で問い返す。

「……このまま、意識が戻らないかも知れない。一つ一つの怪我が酷いのは勿論、脳へ掛かった負担が相当大きいらしい」

「…!!」

その言葉に、夕夏は床へとへたり込んだ。

「賢夜くんをあんな目に遭わせた、あの焔の能力者は…」

「…二人の弟の、慶夜です」

夕夏に寄り添いながらそう返答すると、京は苦々しげな表情を浮かべて眼を細めた。

「っ……そうか」

「慶夜、には…私たちの声が全然……届かなかった…っ慶夜は私や賢を……顔色一つ変えずに本気で殺そうとして…」

虚ろな表情のまま、夕夏が独り言のように呟く。

「賢は私を守ろうと…独りであの子と戦って…それでっ……私を庇って…」

「夕夏…」

「わたしはっ…あの子が自分の知ってる慶夜とは別人にしか見えなくて…怖くて、何も出来なかったっ…!!」