「うそ…」

「…風弓は洗脳を受けてたせいで冷静な判断が出来なかったんだ。正気なら、絶対に晴を危険な目に遭わせる筈ない」

「その冷静な判断が出来なくなる要因を作ったのは陸…お前だろ?現に晴海も、もうお前を信じられなくなってる」

「っ……晴…」

香也の言葉と陸の呼び声に、晴海はびくんと肩を震わせた。

陸のことを信じてるって、言いたいのに――誰の、何を信じたらいいのか解らない。

(でも――)

「…でも陸を見逃して、月虹の人に逆らったんなら…風弓の洗脳は解けたんでしょう?どうして…」

「…さあ、な。陸が上手く口車に乗せたのかもな?もし今からでも陸が月虹に戻れば、風弓の命は助かるかも知れないぞ。晴海…お前は陸にどうして欲しい?」

「そ、れは……」

今此処にいる陸と、月虹に囚われた風弓――どちらかを選べと言うのか。

「これだけ聞かせてやっても答えは出ないか、晴海…だったら月虹の連中が望む答えを教えてやるよ!」

不意に香也が陸に向かって腕を伸ばした瞬間、陸が身構えるより速くその身体が見えない何かに弾き飛ばされた。

「くっ…!!」

「遅いぞ、陸!!」

壁に叩き付けられた陸は直ぐに体勢を立て直すも、香也が更に素早く追い撃ちを掛ける。

香也の翳した掌が藍色の光を帯びると、天井から大量の巨石が陸に向かって降り注いだ。

「陸!」