「今はまだ生きてるが、これから処分が下れば父親と同じ目に遭うかもな」

「処分って…どういうこと?!」

「風弓は炎夏で陸をわざと見逃がした上、戻ってくると月虹の壊滅を狙って施設の破壊騒動を引き起こしやがった。全く、揃って邪魔ばかりしやがる父子だぜ」

「!」

その説明の途中、俯いていた陸がふと顔を上げた。

陸を取り逃がして、月虹を混乱させようとした――?

「…待って、陸……」

最初に慶夜、その後に雪乃が現れた以外に、月虹から追手がやってきた記憶はない。

「風弓…炎夏に来たの?」

振り向いて訊ねると、陸は躊躇しつつも小さく頷いた。

「…俺が晴の家に戻った日の、昼頃」

瞬間、ざわりと全身が冷水に覆われたような悪寒に包まれた。

「……あのとき、私を襲ったのは、風弓…?」

断片的だが、思い出し掛けてきた――つい最近溺れたような気がしていたのは、気のせいではなかった。

これは京が去ったあと、陸の目の前で水中に引き込まれたときの記憶だ。

あれは、風弓のやったことだったのか。

「…まさか、四年振りに見る姉が父親の仇と一緒にいるとは知らず危うくお前を殺し掛けたらしいな」

まさか風弓が、自分を殺そうとした――なんて。