「兄と弟で殺し合い、か」

――誰を憐れむために言い放った言葉か、男がそう呟いた。

「…!?」

その言葉に、晴海は伏せていた視線を跳ね上げた。

光の中には賢夜と、彼に酷似した容姿の青年――慶夜が対峙する姿が映っている。

「賢夜…っ!」

「慶夜は月虹の能力者の中でも、上位と評される力の持ち主だ。それに比べて相手は…凡そ慶夜には及ばない。こいつはやり合う前から結果は決まったようなものだな」

「な…」

「慶夜の強さは、お前も知ってるだろう?手負いとはいえ陸ですら苦戦する程だ」

その言葉に、忘れかけていたあのときの恐怖心が蘇る。

「っ……そんな、賢夜は…彼の、お兄さんなのに…」

「言った筈だ。月虹の能力者は邪魔する奴には肉親だろうが容赦をしない…慶夜は洗脳が強い分、その意思も殊更強い」

それじゃあ、賢夜は――

「…馬鹿な奴だ。従う振りでもすれば良かったものを」

「…っ!!」

男が何気なく言ったその言葉に、耳を疑った。

「貴方、まさか…」

真っ直ぐ男をねめ付けると、相手はその意図を察してか否か首を傾げて笑って見せた。