弟たちの遣り取りを、夕夏は賢夜の腕を掴みながら苦しげな表情で見守っている。

それに気が付いていた賢夜は、陸にこそりと告げた。

「頼む、陸…俺は弟が姉さんを傷付けるのを、見たくないんだ」

「…!」

「俺なら大丈夫だ、打たれ強いのが取り柄だしな。もし慶が正気に戻らなくても……多分、死なない」

賢夜は前を見据えたまま、夕夏を押し退けるようにその手を振り払った。

「陸、行ってくれ!!」

「ぅ…」

その声を合図に陸は夕夏の腕を強引に掴むと、塔の入り口に向かって走り出した。

「賢っ、陸…!!」

困惑して叫ぶ夕夏を余所に、塔の中へと駆け込む。

そのまま上階へ続く階段を駆け上がり始めた瞬間、外からは爆発音が幾重にも響いてきた。

「…!!」

振動から、慶夜の焔の気配が伝わってくる――

「陸っ…陸、待って…!!」

夕夏が哀願するように呼び止める声を、聞かないように足を進める。

だがやはり賢夜のことが気掛かりで、陸も思わず足を止めた。

「夕夏…」