「――いや、二人が残る必要はないよ」

「!」

不意に、涼やかな声が背後から掛けられる。

三人が振り向くと、其処には京が立っていた。

「僕がこの二人の相手をする。君たちは先を急げ」

「兄さん!あの子は…?」

「母親の元へ送り届けてきたよ。他の住民たちも避難させ終わった、だから僕も戦う」

「だけど…!いくら何でも独りで二人を相手するなんてっ…」

「陸」

こちらの言葉を、京の落ち着き払った声がやんわりと遮った。

「お前は、僕を信じないのかい?僕はお前の兄さんだよ、弟は兄の言うことを聞きなさい」

京の強さは、十分理解しているつもりだ。

純粋に霊媒師としての実力だけを見れば、能力が弱体化する前の陸でも恐らく敵わない。

そのまま口を閉ざすと、京はにっこりと微笑んだ。

「いい子だ。僕は心配ないから、お前も必ず戻っておいで」

京の手に、頭をぽんぽんと撫でられる。

「兄さん…」

「話は済んだか?全員逃がすつもりはない、さっさと――」