「――二人共、本当は慶夜を探しに行きたかったんじゃないのか?なのに一緒に来てくれて…」

躊躇いがちにそう訊ねると、夕夏と賢夜は互いに顔を見合わせて、どちらともなく苦笑した。

「慶夜は大事な実の弟だけど…私は晴海のことも妹みたいに思ってるんだよ」

「今優先するべきなのは晴海を助けることだ、慶夜は今すぐ助けなきゃならない訳じゃない…俺たちも晴海が心配なんだ」

「…夕夏、賢夜」

この二人には、つくづく助けられてばかりで、やはり有難いより申し訳ないという気持ちばかり先立ってしまう。

「君もだからね、陸。君にはあんなに立派な実のお兄さんがいるから、必要ないかも知れないけどさ」

「えっ」

面食らって顔を上げると、隣で賢夜がくすりと笑った。

「姉さんは君のことも弟みたいに思ってるんだそうだ。実の弟としては少し妬けるな」

「何変なこと言ってんだよこの子は。弟あっての姉だよ?」

「…それもそうだな」

二人は、いつもそうやって心を明るくしてくれる。

自分にとっても、二人は本当に大切な存在で――だからこそ、先程の賢夜の詰問には胸が痛んだ。

「二人共……本当に、有難う」

小さく囁いた声は、二人に届いただろうか。

夕夏も賢夜も、笑っていた。

「――其処までだ、陸」