見て、いない。

葬儀だって、お金がないからということでまともに出来なかった。

「だって……だってっ…はるは小さいから、見ちゃいけないって…!事故のときの怪我がひどいからっ、こどもは見ちゃいけないって…!!」

「二人が死んだのは、何の事故でだった?」

――やめて。

「覚えてない…わからない…っそのときのことが…うまく思い出せないの…!」

「二人が事故に遭ったとき、お前と母親は何をしてた?何故お前と母親は無事で二人だけ死んだ?」

踏み込んで、来ないで。

「やめて…っ嫌だ…!!」

「聞け、晴海。これは俺だけが知っている話じゃない…陸もお前に出逢う前から知っていた筈だぞ」

男の手が頬に触れ掛けた瞬間、晴海は激しくかぶりを振ってそれを払い除けた。

「いやっ…!!いやだっ…やめて、聞きたくない…!!」

幼かった自分には、母からの説明だけが全てだった。

良く良く考えてみれば、辻褄が合わないことも多い筈だが、それでも自分は母の言葉を信じる他なかった。

「…晴海」

涙が、溢れ出して止まらない。

何もわからない、怖い、怖くて堪らない。

たすけて、りく――


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