「ん…」
誰かの指先が頬を撫でたような気がして、沈んでいた意識が急浮上する。
「――気が付いたか」
すると、目の前で見知らぬ男がそう問い掛けてきた。
「だれ…?」
頭が痛くて、身体が重い。
上手く回らない呂律で訊ね掛けると、相手はくつくつと喉を鳴らして笑った。
「俺に、見覚えはないか?」
逆にそう問い返われ、男の容貌をゆっくりと眺める。
肩口まで伸びた、胡桃色の髪と菫色の瞳――
「あなた、は…」
夢の中で、窓辺からこちらを見ていた青年だ。
「また逢ったな、晴海」
男はこちらを見つめて、夢と同じように笑みを浮かべた。
その口から思いがけず名を囁かれ、身が竦む。
「!どうして私の名前を知ってるの…?!それに此処は…」
辺りを見回すと、見覚えのない薄暗い殺風景な部屋に、自分と相手しかいないことに気が付く。
「此処か?春雷の街にある、時計塔の天辺だよ。外に出ればでかい時計盤が間近で拝めるぜ」
誰かの指先が頬を撫でたような気がして、沈んでいた意識が急浮上する。
「――気が付いたか」
すると、目の前で見知らぬ男がそう問い掛けてきた。
「だれ…?」
頭が痛くて、身体が重い。
上手く回らない呂律で訊ね掛けると、相手はくつくつと喉を鳴らして笑った。
「俺に、見覚えはないか?」
逆にそう問い返われ、男の容貌をゆっくりと眺める。
肩口まで伸びた、胡桃色の髪と菫色の瞳――
「あなた、は…」
夢の中で、窓辺からこちらを見ていた青年だ。
「また逢ったな、晴海」
男はこちらを見つめて、夢と同じように笑みを浮かべた。
その口から思いがけず名を囁かれ、身が竦む。
「!どうして私の名前を知ってるの…?!それに此処は…」
辺りを見回すと、見覚えのない薄暗い殺風景な部屋に、自分と相手しかいないことに気が付く。
「此処か?春雷の街にある、時計塔の天辺だよ。外に出ればでかい時計盤が間近で拝めるぜ」