「!」

詳細を訊けば状況は違うのだろうが、今の自分と似たような状況ではないか。

「でも…あるとき急に状況が変わって、このままじゃ相手と今までみたいには逢えなくなるって転機があってさ。だからその前に、相手とちゃんと話をしようって思ったんだ」

「…それ、で?」

思わず興味津々で聞き返すと、夕夏は少し恥ずかしげに首を傾げた。

「何て言うか、その…色々、もっと早く言ったら良かったなってことが沢山あった」

(もっと早くに…?)

確かに先のことは何が起こるか全く判らない。

それに陸は、また月虹に戻るつもりだと周に告げている。

「そっか…ちなみにその相手の人ってどんな人?」

「ん。秘密」

「えー」

「君が陸と話が出来たら、教えてもいいよ」

意地悪、と不満げに呟くと夕夏はけらけらと笑って見せた。

それでも、自分を想って色々と言ってくれているのだと判るから、嬉しくて何だかくすぐったかった。

(ごめんね、夕夏。有難う)





錯綜(さくそう)する思慕と黒影 終.