「私が炎夏に帰ってきたときも、知り合い何人かが“お前が留守の間にすげー可愛い子が引っ越してきたんだぞ”ってわざわざ報告しに来たし」

「ええっ?!」

夕夏の知り合いたちだって名前を訊いたところで、きっと誰のことか殆ど判らないのに。

「実際に逢ったらほんとこんなに可愛いんだからね〜?おねーさんびっくりしたよ~」

夕夏の手がぺたぺたと髪や耳や顔に触れる。

「あの馬鹿がいなかったら、君のことみんな放っておかなかったよ?多分、毎日違う男から花が届いちゃうくらい」

「そ、そんなの…大袈裟だよっ」

「商店街のおっさんたちだって、やけに君に甘かったみたいじゃないか。みんな訊いてもないのに、君におまけしたって話沢山してきたよ?」

確かに、買い物の度に買った物の数が一つ多かったり頼んでないものまで追加してあったり、尚且つ払った代金は少なめだった、ということなら何度も覚えがあるけど。

「あ…あれは、うちが貧乏だからじゃなかったの?」

若しくは、母の顔が広いお陰とか。

「…この鈍感っ子め……」

「ひゃっ!ゆっ、夕夏、やめっ…くすぐったいよっ」

「わー、すっごいぽよんぽよん。ちょっとでいいから私のまな板に分けてくんない?大体、色恋沙汰には疎いのに何でこんな発育いいのかなぁ?」

「やぁ、ちょっ…どこさわってっ…ひゃあっ!」

お湯の色が桃色掛かった乳白色なので、夕夏の手が何処から襲ってくるのか判らない。

「だぁって、晴海があんまりお鈍ちゃんなんだもの~」

どうしよう、陸に女装を強要していたときと同じくらい楽しそうだ。