「それは…」

「何もしなかったら、そのうち炎夏の混乱も収束して陸とのことは有耶無耶なまま、帰らなきゃならないかも知れないよ?…それでも晴海は構わないの?」

何もしないまま、終わる。

何か行動を起こして、変わる。

「……わからない」

現状を変えて、陸の気持ちをはっきり聞いてしまうのが怖い。

「ああ、もう」

夕夏は苦笑しながら、両手を晴海の頬に添えた。

「君はもう少し自分の魅力に気付いたほうがいいよ」

でも、と口にし掛けると今度はぺちんと両頬を叩かれた。

あまり痛くはなかったが、想定外の行為だっただけに驚く。

「でも…自分に自信がないの?」

胸中を見透かされてどきりとしたが、そのまま黙って頷いた。

今まで誰かにこんな好意を抱くことなんて、なかったから。

こんなとき、どうすればいいのか解らない。

「君さ、炎夏中の同世代の男連中に凄く人気なんだよ?秦のせいでみんな大っぴらに出来なかっただけで」

「…そう、なの?」

だって、炎夏の若い男の子たちとなんて、余り話す機会がなかったのに。