「――って、案の定物凄い大浴場だしっ」
夕夏の声が湯気の立ち込めた広い浴室内に響き渡る。
「京さんが“二人で使うなら広いほうがいいよね”って、一番大きいお風呂の用意してくれたみたい」
その気遣いは有難いが、流石に広いにも程があるような。
「此処だけで私の家よりも広い気がする…」
「…同じく」
小さく息を吐きながら、晴海は湯船を満たす薄桃色の湯を掬い上げた。
「陸が、こんな立派な国の領主様の息子だったなんて」
すると夕夏がぱしゃん、と軽く波を立ててこちらを振り向いた。
「実は、その可能性も考えたことはあるよ。何の確証もなかったから、口にはしなかったけど」
「…何で?」
「領主子息が行方不明、って話は今回初耳だったけど。春雷の領主夫人が純血の風使いで絶世の美人ってことは昔からかなり有名なんだ」
「そうなの?」
「風の国の領主夫人が風使いって…本来なら何ら珍しくない話だけど、春雷にはもう殆ど純血がいないから話題になったんだよ」
「そういえば天地先生も言ってたけど…どうして?秋雨にも炎夏にも、その国の純血の人は沢山いたのに」
天地は世代的に知らなくても仕方ないと言っていたが、夕夏は知っているのだから。
自分は勉強不足というか、世間知らずというか。
「前に教えたように、移民が多いのが一つ。他国から流れてきた異種族との混血が増えた。でも決め手はそれじゃない」
夕夏の声が湯気の立ち込めた広い浴室内に響き渡る。
「京さんが“二人で使うなら広いほうがいいよね”って、一番大きいお風呂の用意してくれたみたい」
その気遣いは有難いが、流石に広いにも程があるような。
「此処だけで私の家よりも広い気がする…」
「…同じく」
小さく息を吐きながら、晴海は湯船を満たす薄桃色の湯を掬い上げた。
「陸が、こんな立派な国の領主様の息子だったなんて」
すると夕夏がぱしゃん、と軽く波を立ててこちらを振り向いた。
「実は、その可能性も考えたことはあるよ。何の確証もなかったから、口にはしなかったけど」
「…何で?」
「領主子息が行方不明、って話は今回初耳だったけど。春雷の領主夫人が純血の風使いで絶世の美人ってことは昔からかなり有名なんだ」
「そうなの?」
「風の国の領主夫人が風使いって…本来なら何ら珍しくない話だけど、春雷にはもう殆ど純血がいないから話題になったんだよ」
「そういえば天地先生も言ってたけど…どうして?秋雨にも炎夏にも、その国の純血の人は沢山いたのに」
天地は世代的に知らなくても仕方ないと言っていたが、夕夏は知っているのだから。
自分は勉強不足というか、世間知らずというか。
「前に教えたように、移民が多いのが一つ。他国から流れてきた異種族との混血が増えた。でも決め手はそれじゃない」