「陸、どうしたの?」

「…いや、何でもない」

あまり何でもないようには見えないが、どうしたのだろう。

「――ああ!そうだ晴海ちゃん、京が隣の部屋で俺の代わりに雑務に追われてるんだ。悪いがちょっと呼んできてくれるか?」

すると周が突然両手をぱちんと合わせて声を上げた。

「えっ…?は、はい」

唐突な申し出に戸惑いつつ、何か急ぎの用を思い出したのかと考え晴海は足早に部屋を後にした。

――晴海が出ていったのを確認すると、周は俄に陸へと詰め寄った。

「おい陸…!お前、あの子に何か話したか?」

「急にどうしたの、父さん。それに何かって…何のこと?」

「どっかで見覚えのある子だとは思ってたんだが思い出したんだ!あの子、才臥さんの娘だろ?能力者の生体研究の第一人者、才臥 充博士…」

「ちょっ…ちょっと待って!晴や充さんのことをどうして父さんが知ってるのっ?それに、充さんは医者じゃっ…」

「確かあの子、炎夏で母親と二人暮らしだって言ってたよな。才臥さんはどうした?何で一緒じゃないんだ?」

「それはっ……色々複雑なんだ。後で詳しく話すけど…晴の前では言えない。それに、俺にも良く解らないことがあって…」

「…解った、なら俺も何故彼女を知ってるかを話すよ。但し、他の誰にも言うんじゃない――」


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