「うん…っ」

ふと周の顔を見上げると、その面持ちは痛みを堪える陸と同じ――或いはそれ以上につらそうな苦痛の表情を浮かべていた。

自分の手で陸を苦しめている、実際にはその真逆なのにそんな感覚に陥っているのかも知れない。

するとそんな周の腕から、金色の光とは別に黒い靄のようなものが立ち上ぼり始めた。

「それ、は…」

「引き剥がされて体外に抜け出た魔力だ。これが出来るだけ多く排出されれば、その分陸を蝕む作用は減少する」

「…!」

晴海は両手を組み合わせて、ただ必死に祈るしかなかった。

陸が無事に力を取り戻せるようにと――

「陸、仕上げだ」

蹲るよう俯いている陸に、周がそう声を掛けた。

瞬間、ぱちんと静電気が走ったような音が辺りに響く。

「っ……ぁ…」

すると陸は、驚いた様子で顔を上げて眼を瞬いた。

「あれ…」

「…どうだ?陸」

その陸の表情を、周は少し不安げに覗き込んだ。

「凄く、身体が軽くなった感じ…力が使えなくなってからはずっと、気怠くて身体が重かったのに」