「…月虹には俺のように、大切な家族と引き離された子供たちがまだ残ってるんだ」

陸の想い人も、その中にいるのだろう。

だからこんなにも――

「…俺のせいで、父親を失った子もいる。本当は、あの人も助けたかった…っだからせめて、その子供だけでも助けたい」

周は俯くと、黙ったまま首を振った。

「その能力者たちを利用して、薄暮は戦争を始めようとしてる。あの国は春雷も狙ってるんだ。俺は家族や父さんの国を守りたい、そのためにも月虹の計画を止めたいんだ」

「どうして、お前は…」

困惑する周に対して、陸は笑いながら答えた。

「何のためにこんな力を持ってるのか、ずっと悩んでた。それまではこんな力なんかいらないって思ってて。でも、守りたいものを見付けてからは力が使えないことが、凄く悔しかった」

誰かに利用されるのではなく。

大切なものを守るために。

もう一度力を取り戻したい――陸は海の上でもそう語っていた。

「それに今は…精霊を喚ぶ力は父さんから、風を呼ぶ能力は母さんから貰ったんだって解ったから。もっと大事にしたいんだよ」

「陸…」

「二人から受け継いだ力を、守りたいもののために使いたいんだ、父さん」

すると周は、再び盛大に溜め息をついてぽつりと呟いた。

「…愛梨に似て、強情なのは相変わらずだ」

「父さん」