「…そうだ。制約を掛けている魔力そのものを取り除くからな、その分得られる効果は大きいよ」

「だったら俺…つらくて構わないからそうして欲しいんだ」

一向に食い下がらない息子の態度に、困り果てた周は大きく息を吐いた。

「陸、お前…月虹に戻るつもりか」

「…!!」

周が陸へ投げ掛けた質問なのに、まるで自分が問われたかのような衝撃を受けた。

陸がまた、月虹へ行く。

なんのために?

「お前がそうまでして力を取り戻そうとしてるのは、月虹に対抗する力を持ちたいからじゃないのか?」

「………」

陸は否定も肯定もしなかった。

ただ周の眼を、じっと見据えている。

「俺は、折角戻ってきたお前を何処にも行かせたくない。この件はもう国単位で対策を取るべき問題だ…!お前が一人で立ち向かう必要なんかない」

「彼処には…俺の大事なものがまだ置き忘れたままになってるんだ。俺はそれを全部、自分の手で取り戻したいんだよ」

大事なもの。

それって、何のこと…?

心の中に、小さい靄(もや)のような不安が生じる。

「奪われた記憶のことを言ってるなら、今に戻るかも知れないだろ?それに、記憶がなくても…お前が無事なら俺たちはそれでいい」