「――さて、始めに説明しておこうか」

周の仕事部屋らしき一室に招き入れられて、晴海は陸と共に仕事机の前に置かれた大きな肘掛け椅子へ座っていた。

向かい合わせの椅子に座った周が、難しそうな顔付きで話し始める。

「陸には先に少し話したが…その制約の魔法は俺でも完全には解くことが出来ない」

その言葉にふと陸の横顔を振り向いたが、陸は真っ直ぐ前を見たまま頷いた。

「一番望ましいのは、陸の身体から完全に魔力を取り除くことだが…身体中に魔力が根強く食い付いてしまっていて、それを行うと陸の命まで削る恐れがある」

「…危険を承知で、それを限界のところまでやって貰うことは出来ないの?」

陸の問いに、周の眉間の皺は深くなった。

「出来なくは、ないだろうが…無理矢理引き剥がすような形になるため、恐らくお前に壮絶な痛みを与える」

「俺、大丈夫だよ。だから…」

「駄目だ。魔力も引き剥がされまいと、その反動でお前に大きな負担を掛ける。お前が受ける痛みは、俺の想像以上かも知れない」

周は陸に、出来るだけ苦痛を与えたくないのだろう。

もし痛みを与えずに済む方法が他にあるのなら、尚更だ。

「制約の効力を弱める別の魔法を使う。それだったら痛みは少なくて済む」

「でも、効果が高いのは最初に話してくれたほうじゃない?」

透かさず陸が言葉を続けると、周はすっと紅い眼を細めた。

「陸…」

魔力や霊力のことは良く解らないが――もし前者のほうが有効な手段だとして、陸は何故それに拘るのか。