「――ところで、みんな。陸から聞いたんだが…炎夏では随分大変だったみたいだな」

周のほうから気軽に声を掛けられ、思わずどきりとした。

「あっ、いえ…そんな」

陸と京の父親とはいえ、彼はこの春雷の領主――流石に普段通りの話し方ではまずいだろう。

なんてことを言い出せば、京にも本来ならこんな気軽には話せないのだが。

「晴海ちゃん、父にそんな畏まって話さなくていいよ?近所のおじさんみたいな扱いで。街の人たちだって、そんな感じだし」

「え…ええっ?!」

「あんまり改まって話されるのは苦手でな。だから、もっと気楽に喋ってくれていいよ」

変わった人――というか、領主だと思った。

「他国の領主様たちにも変わり者扱いされてるんだけど、まあ凄く父さんらしいよね」

「どういう意味でかな、京くん」

けれどこういう人柄だからこそ、住民たちに愛されているのだろう。

陸の家族が、まさか領主の家柄とは思いも寄らなかったが、優しそうな人々で安心した。

「君たち三人には、本当に感謝し尽くせない位陸が世話になった…だから良ければ三人共、この邸に滞在してくれないか?」

「…!お、お邸にですかっ?」

周からの申し出に、思わず声を上げてしまった。

断る理由なんてないが、そんな勿体ないことをおいそれと了承してもいいのだろうか。

「この邸にはやたら部屋が多いんだよ、使って貰ったほうが部屋も喜ぶだろ。陸も君たちが一緒だと嬉しいだろうし」