「こんな綺麗な銀髪を染めるのは勿体ないが…まあ、目立つよな」

陸を挟んで夕夏の反対側から、賢夜が言った。

「あとは眼だね。取り敢えず眼鏡とかで隠せるんじゃない?春雷に着けば色を変えられる道具とかも色々揃いそうだけど」

色々と思案している二人――特に夕夏は陸本人より妙に楽しそうだ。

「は、晴……」

天地姉弟の間に挟まれた陸から、助けを求めるように弱々しく名を呼ばれる。

夕夏があまりにも楽しそうなので水を差しにくいところだが――

「…あの、えっと、そのね、陸…もしかしてあんまり髪の色とか、変えるの嫌?」

見兼ねてそう助け船を出すと、陸はおずおずとゆっくり頷いた。

「そっか…」

それを見た夕夏は言葉を切って俯いたが、すぐに名案を打ち出したと言わんばかりに両手を合わせた。

「だったら、あとはあれだね」

「あれ?」

夕夏は陸の両肩にがっしりと手を置くと、満面の笑顔を浮かべた。

それにつられて、陸も首を傾げながら苦笑いを返す。

陸は逃げたそうに身構えたが、夕夏の両手に押さえ付けられ逃れることが出来ない。

「あちこち跳ねてる癖毛をちゃんと鋤(す)いて軽く化粧するだけで、陸なら十分通用するよ」

「あの、夕夏…何の話…」