真っ直ぐに見つめられて、そんなことを言われたら自然と顔が赤くなってしまう。

よくよく考えなくとも、自分の顔のすぐ間近に陸の顔があるではないか。

「え、ぁ、えっと…」

「?晴、どした」

陸はその距離感をまるで解っていないようで、狼狽える晴海の様子に不思議そうに首を傾げた。

「な、なんでもないっ」

照れ隠しに思わず勢い良く立ち上がると、突如轟音と共に足元が沈み込んでがくんと揺れた。

「ひゃっ…」

「晴!」

その弾みで前のめりによろけたところを、陸の腕に抱き止められた。

「大丈夫?」

「あ、ありがと…腕、痛いのにごめんね。ところでこれ何の音だろ?」

轟音は鳴り止まず、今も尚辺りに響き渡っている。

「…多分、船が動いてる音じゃないか?」

「だよね」

窓を覆う遮光幕の隙間から覗く闇空には、まだ陽が昇る気配は無い。

「やっぱり夜明け前に港を出るんだ。でも、こんな大きな音がして大丈夫なのかな」

「――晴海、陸、外に来てごらん!」