次の瞬間、賢夜に強かに左肩を叩かれて陸は身を竦めた。

「い…っ!!」

「けっ、賢夜?!」

「こんなときに痩せ我慢するもんじゃないぞ?…晴海、陸の怪我の手当てを頼むよ」

「う、うん」

多少荒っぽくはあるが、今のは陸が遠慮しないよう賢夜なりに配慮してくれた行為のようだ。

「さて、これからのことだけど。賢、陸にちゃんと説明した?」

「来る途中で粗方は話した。後は隙を見て船を出すだけだ」

「それじゃ長居は無用だね。発つ準備に入るか」

てきぱきと話を進める夕夏に大人しく従っていると、慌てて陸が夕夏に待ったを掛けた。

「っでも夕夏、外ではまだ役人が何人か見回りをしてたよ。個人船の出入りもまだ監視されてるみたいだし、今はまだ行かないほうが…」

すると夕夏は意味深に笑って、人差し指を口元に寄せた。

「大丈夫だよ。心配いらないから、君は休んでなさい」

夕夏がそのまま船室の外へ出て行くと、賢夜も付き従うように姿を消した。

「…?」

何も聞かされていない晴海は、当惑した表情でこちらを向いた陸と顔を見合わせた。


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