「よし…言ってみろ」
秦が拳を下ろしたのを合図に、男は恭しく一礼してその傍らに跪いた。
(…何だ?まさか、晴に何かあったのか……?!)
「その銀髪の青年ですが…薄暮の兵器開発施設から脱走した実験体である可能性が高いようです」
「っ!!」
男の言葉を聞き届けた瞬間、どくんと心臓が跳ね上がって、思わず息を飲んだ。
「薄暮から極秘でその実験体の身体的特徴を示す情報が送られてきたのですが…」
「実験体ねえ…それが奴の容姿と一致するって訳か」
部下の報告に、秦はくつくつと愉しげに喉を鳴らした。
「ええ。銀髪に紅い眼、それから左肩から二の腕にかけて、大きな傷を負っている可能性が高いと」
まさか、今まで月虹の存在をひた隠しにしていた薄暮がこうも易々と情報を開示するなんて、俄には信じ難かった。
自分の身柄が炎夏側に捕獲されたことを知って、連絡を寄越してきたのだろうか。
何にせよ、今はそれを最も知られたくない男に知られてしまったことが痛手だった。
「ふふん…こいつの左腕にも傷があったな。その他にもやたらと負傷してるが」
「対象者を発見し次第、早急に身柄を引き渡して欲しいとのこと。如何致しますか?」
「相手方の事情は解った。一度下がれ」
「は」
男が退室すると、秦は実に愉しげな表情で陸の顔を覗き込んできた。
秦が拳を下ろしたのを合図に、男は恭しく一礼してその傍らに跪いた。
(…何だ?まさか、晴に何かあったのか……?!)
「その銀髪の青年ですが…薄暮の兵器開発施設から脱走した実験体である可能性が高いようです」
「っ!!」
男の言葉を聞き届けた瞬間、どくんと心臓が跳ね上がって、思わず息を飲んだ。
「薄暮から極秘でその実験体の身体的特徴を示す情報が送られてきたのですが…」
「実験体ねえ…それが奴の容姿と一致するって訳か」
部下の報告に、秦はくつくつと愉しげに喉を鳴らした。
「ええ。銀髪に紅い眼、それから左肩から二の腕にかけて、大きな傷を負っている可能性が高いと」
まさか、今まで月虹の存在をひた隠しにしていた薄暮がこうも易々と情報を開示するなんて、俄には信じ難かった。
自分の身柄が炎夏側に捕獲されたことを知って、連絡を寄越してきたのだろうか。
何にせよ、今はそれを最も知られたくない男に知られてしまったことが痛手だった。
「ふふん…こいつの左腕にも傷があったな。その他にもやたらと負傷してるが」
「対象者を発見し次第、早急に身柄を引き渡して欲しいとのこと。如何致しますか?」
「相手方の事情は解った。一度下がれ」
「は」
男が退室すると、秦は実に愉しげな表情で陸の顔を覗き込んできた。