『その眼っ…!その紅い眼で、こちらを見るな――!!』

思い出したくもない、四年間の中で最も忌まわしい記憶。

訳も解らず、眼の色彩を理由に殴られ続けた、記憶。

だからこの眼が嫌いだった。

(…君に、出逢うまでは)

この眼を綺麗だと言ってくれた彼女の言葉が、泣き出したくなる程嬉しかった。

少しだけ、この眼の色が好きになれた。

(晴――)

早く晴海の傍へ戻らなければ。

ずっと傍にいると、自分が守るのだと、約束したのだから。

「…成程。自分がどんな状況に置かれてるのか、まだ良く理解出来てないみたいだな」

相変わらず沈黙を保ち続けていると、苛立った秦の手に再び髪を掴まれた。

「いいか、お前は俺と対等じゃない。これからそのことを思い知らせてやる!!」

秦が拳を振り上げたのを見て、痛みに備えて身構える。

「――秦様、お待ちを」

しかしいつの間にか姿を消していたらしい部下の男が、再び現れて秦を制止した。

「何だっ!!」

「今しがた、興味深い話が入って参りまして」