――金髪?

「貴様に良く似た声質と容姿、おまけに風の能力を扱うところまで同じだ。知らないとは言わせないぜ」

何のことを問われているのか、全く解らない。

(俺に似た、金髪の能力者…?)

それこそ、自分に成り済ました人間の偽装ではないのか?

まさか自分の知り得ぬところで追手が現れたか――いや、月虹には自分以外に風を扱う能力者はいない。

(…能力者以外、なら……でもあいつは金髪じゃない)

姿を変えて晴海に近付くなら、完全に自分の姿を擬態する筈だ。

それに晴海は何も言っていなかった――秦が現れたことすら。

(話を聞きそびれた、か?…確か風弓が現れる直前、晴は何か言い掛けてた)

取り敢えず自分が不在の間に秦が晴海と接触し、件(くだん)の金髪の人間に撃退されたらしい、ということは想像がついた。

「っ答えろ!!」

黙ったまま思案を巡らせていると、痺れを切らした秦の拳が再び頬に飛んだ。

身体がくんと大きく蹌踉(よろ)めいて、それを支える両手首と両腕が悲鳴を上げる。

「っ……!!」

しかし声を上げずに堪えると秦は困惑の表情を浮かべながら後退りした。

「くそっ…何だよこいつ、妙に打たれ慣れてやがる」

――殴られるのは、否応なしに慣れてしまった。