「っ…!?」

身体が床へと倒れ込まなかった代わりに、両腕に引き攣(つ)れるような激しい痛みが走る。

ふと視線を持ち上げてみるが、薄暗い照明と体勢とが相俟って頭上は良く見えない。

恐らくだが、両手首を枷で拘束されており天井から伸びる鎖と繋がれているようだ。

「どうだ?目が覚めただろ」

鎖は爪先を伸ばしても、やっと床に届くか届かない程の長さで――要は全体重をほぼ両腕だけで支えている状態だ。

(これはまた随分と悪趣味な…)

自分でも存外冷静な頭でそんなことを考えていたら、目の前の秦が苛立ったように声を張り上げた。

「おいっ、聞いてるのか!?」

「え。悪い、全然聞いてなかった」

「てめ…っふざけやがってっ!!」

熱(いき)り立った秦が、再び殴り掛かって来ようとした瞬間――

「秦様、少々落ち着かれては。相手に話す暇(いとま)も与えずでは尋問が儘なりませぬ」

と、秦の傍らで部下らしき男が制止に入った。

(…尋問?)

「ちっ…おい貴様、今日はあの小賢しい風の能力を使わないのか」

少し様子を伺うように、尚且つ上から目線を保ちながら、秦はそう訊ねてきた。

「………」