「やっぱり陸を使って晴海を誘き寄せようって訳だね。あの馬鹿のやりそうなことだよ」

夕夏が呆れ返った様子で大きな溜め息をついた。

「元々秦様が捕まえたいのは晴海ちゃんだからねぇ」

「っ…私が、出て行けば……陸は助かるのっ…?」

「いや、君が行ってもあの馬鹿が陸を解放するとは思えない。行くだけ無駄だ」

「陸の罪は君を捕まえるための口実とはいえ、あの馬鹿のことだ、陸に理不尽な逆恨みをしてる可能性は高いしね」

日野も「秦様ならやりかねんなあ…」としみじみ頷いた。

ならば、どうすれば陸を助けられるのだろう。

「…姉さんたちは此処で晴海に付いててやって。陸のことは、俺が助けに行く」

「っ賢、あんた本気っ?!陸の居場所には多分、厳重な警備が敷かれてる筈だよ!其処に 一人で行くなんて――」

賢夜の提案に、夕夏が声を張った。

だが賢夜は姉に一瞬目配せすると、ふと晴海に向かって申し訳なさそうに苦笑した。

「陸を一緒に連れて来れなかったからな。…無理矢理連れてきてしまって、ごめん」

「そん、な…っ」

そんなことない、と言いたかったのに上手く声が出せなくて、晴海は大きく首を振って見せた。

「賢、だったら私も一緒に」

「単独行動のほうが目立ちにくいし、晴海を守るには日野さん一人じゃ心許ないし」

「あれ?そんなに僕って頼りない?」