ばちっ、と空気の爆ぜる音が耳を擘(つんざ)く。

素早く振り返ると、陸を取り押さえている男がその左腕に電撃銃を押し付けていた。

「っ……!!」

陸は悲鳴を上げなかったが、その瞬間、がくりと全身から力が抜けた。

「やっ…陸っ!!秦、陸になにっ…!!」

「身体が暫く麻痺するだけだ、残念ながら死にやしない。まあ…何せ相手は凶悪犯だからな、意識がぶっ飛ぶ程度まで威力は強めてあるぜ。さて、晴海…お前も俺と一緒に来て貰おうか」

「!!……ぁ…」

秦が嬉々としてこちらに歩み寄ってくる。

逃げなくては、と頭では解っているが、足が動かない。

逃げたら、陸が秦に連れて行かれてしまう。

狼狽する晴海に向かって、勝ち誇った表情で迫る秦が手を伸ばす。

――しかし、秦の手が届くよりほんの少し早く何者かに腕を掴まれた。

「きゃっ!?」

横目に見える細い脇道から伸びてきたその腕に、強い力で引き込まれて足が縺(もつ)れる。

「こっちだ!!」

脇道は人一人がやっと通れる程の、道というより建物と建物の隙間だった。

晴海を其処へ引き込んだ腕の主は半ば強引に晴海の身体を抱き抱えて駆け出した。

不意の出来事に面食らっていた秦は慌てて「追え!」と叫んだが、役人たちは一斉に狭い道へ押し寄せたため入り口で詰まってしまった。